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【Opera】今どきのオペラの底力 – Opera Forward Festival 2017 –

赤ちゃんの帽子のような、やわらかそうなかたちをした雲が青空に浮かんでいます。陽気に誘われ、表に出ました。風が強いのでまだダウンジャケットが必要ですが、オランダにもとうとう春がやってきたように感じて心が弾みます。

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アムステルダムの国立オペラ劇場Dutch National Opera & Ballet)主催の「Opera Forward Festival」、略して「OFF」フェスティバルが、2017年の3月18日から31日まで開催されました。若手による3本の新作オペラの上演を軸に、オランダ国内の学生による15分の短編オペラ計6本のほか、ワークショップやマスタークラスなど、総勢500名近くの学生やオペラ制作に関わる脚本家、作曲家、演出家、歌手などを巻き込んだ大規模な音楽祭でした。

オペラというジャンルの明るい将来を作るために、国立オペラ劇場が主体となって企画したのがこのフェスティバル。現在、オペラが抱えている問題とは一体何なのでしょうか。「アートで世界は変わるか。アートの持つ力と非力さ」というテーマのトークイベントでは、オランダ人の若い脚本家からこんな言葉が出ました。

「今の世の中にとって、オペラの制作のタイムスパンは長すぎるし、規模も大きすぎる。長くて3年や5年をかけて制作しても、時代に合ったものを適したタイミングで発表できないのが現状です」

だからこそ、短期間で作られた現代性のあるテーマの新作オペラを集中的に連続上演し、若者と聴衆を巻き込み、公に広く問いを投げかける点に、このフェスティバルの意義があるのでしょう。

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22日14時から劇場2階の屋外テラスで、「The limit is reached」という即興(!)のオペラが発表されました。黒いコートの集団とテノール・バス・ソプラノのソリスト、そして弦楽五重奏が、青空の下、吹き荒れる風に髪をなびかせながら、周りの環境をすべて取り込むような素晴らしい表現力で、聴衆をたっぷり15分間引き付けました。

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フェスティバルのプログラムには、「オペラ」というひとつの完成された形式のみにとどまらず、オペラが総合芸術として当然含みうる、あらゆる芸術要素が取り込まれていました。ダンス、音楽、戯曲、美術……それぞれの方向に伸びていく若い才能が集められ、学生スタッフは会場内のあちこちを歩き回っています。

オペラを学ぶ人たちによる公演やプロの演出家のレクチャー等が無料で一般公開された「OFF day」には、オペラファンらしき年配夫婦やお洒落なカップルが公演をはしごするために、それぞれの会場に楽しげに向かう姿が見られました。

即興のオペラなどは、いったい何が起こるのか未知数であるだけに好奇心が高まって、会場には大勢の観客が駆けつけ、息苦しいほどの満員になった会場も多数ありました。熱気の一方で、出演する学生たちは気負いがなく、整理券が足りなくなっても、そんなに注目されているとは思っていないような自然体でした。

色々な要素があって十分面白かったのですが、個人的には、オーケストラピットからの声、つまり指揮者や座付きのオーケストラの演奏家たちの意見を聞く場があればと思いました。会場内では、アムステルダム音楽院の現役学生たちにも何人か出くわしたのですが、彼らの姿を演奏以外のイベントでも見て、詳しく話を聞いてみたいものです。またそれは別の機会に。

Opera Forward FestivalMagazineをチェック → http://operaforwardfestival.nl/en/magazine/

text and photo / Mako Yasuda

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