
ロックダウンの緩和へ
オランダでは、2021年4月から必要なウィルス対策をした上で、全国的に文化やスポーツの催しを再開するための緩和に向けた試みが行われています。
実際の内容は、オーケストラのコンサートや演劇、美術館やテーマパーク、カフェなども含めたさまざまな「密」の発生する場所に、40時間以内のコロナウィルス検査の陰性証明のある人だけに参加させる「試験的オープン」を行い、『国内の感染者数の増減にどう影響するか』、『ルールを守って行えるか』などを見るというものです。手動はオランダの文部科学省と厚生省。チケットもウィルス検査も完全予約制です。
今回はこの試験的オープンにあわせて、オランダの誇る春の花園「キューケンホフ公園(Kenkenhof)」へ私が実際に足を運んだときの模様をレポートします。
キューケンホフ公園とは?
オランダに観光に来たことのある方ならもうご存じだと思いますが、キューケンホフ公園について少しおさらいしてみましょう。
オランダのリッセ(Lisse)にあるキューケンホフ公園は、毎年春から初夏にかけて期間限定で開かれる庭園です。チューリップを始めとするさまざまな花が咲くようすを楽しみながら散策できるオランダ随一の花を満喫する観光スポットです。

もともとは15世紀の伯爵夫人によって築かれた大きな家庭菜園でしたが、19世紀半ばに英国風の庭園として整えられ、今に至ります。1950年に一般公開されて以来、春のオランダといえばキューケンホフ、というほどの絶大な人気を誇る場所のひとつです。
サッカー場50個分以上の広大な敷地に700万本の花が咲き誇るようすは、何度見ても圧巻です。古くから花の栽培や貿易で知られているオランダらしく、チューリップや水仙、ヒヤシンスなどの球根から咲く花が多いのが特徴でしょう。
コロナ禍での限定オープンの流れ

冒頭でお伝えした通り、2021年のキューケンホフは政府主導の実験的オープンの一環として限定公開されました。時期は4月の第2週・第3週の週末のみとごく短期間に限られています。
参加のために、まずキューケンホフ公園の公式ホームページから入場時間帯を選んでチケットを購入したあと、政府が用意したコロナウィルス検査の予約専用サイトを通して、検査の日時を確保しました。
入場予定の時間の40時間前以内に予約した場所で簡易検査を受け、陰性だった場合のみ、「CoronaCheck」というアプリを通して、入場に必要なバーコードを作成できる……という仕組みです。(なお、陽性の場合はチケットをちゃんとキャンセルできたようです。)
当日、公園のゲートでは皆がマスクを着用して並びました。「CoronaCheckアプリ」と「公園の入場チケット」を別々にスキャンしてもらい、ようやく入場。新しい手順に戸惑う私たち来場者をスタッフの方々がうまく誘導してくれたおかげで、スムーズに入ることができました。
なお、園内では、対人距離をじゅうぶんに取れる屋外スペースにかぎってマスクの着用は不要でした。通常なら今の時期、大混雑しているはずのキューケンホフ公園。以前、友人が「視界に花より人ばかり入ってくる……」と嘆いていたほどですが、今年にかぎってはある程度の余裕をもって鑑賞できる状態だったようです。
少ないとはいえ、1日につき最大で5000名の入場が許可されていたことを考えると、公園全体の大きさが分かります。
2021年4月のキューケンホフ公園のようす
園内には指定されたルートはなく、どこから見てまわるのも自由です。花好きなら、どのエリアを見ても時間が経つのを忘れるほど楽しめます。
どのエリアから歩き始めるかは毎回悩むところですが、私が個人的におすすめするのは以下のエリアです。
- 風車付近のピクニック広場
- 公園中央のWillem-Alexander屋内展示場
- 大きな水路と噴水のある、Wilhelmina周辺エリア
- 癒し系の静かなエリア、Juliana/Tulpomania周辺
それぞれのおすすめポイントを以下にご紹介いたします!
1. 風車付近のピクニック広場
芝生やベンチに座って、ゆったりと動く風車を見ながら、のんびりできるエリアです。ピクニックをするのにぴったりの芝生が広がっています。
ちなみに、この風車広場の近くには、ミッフィーのおうちもありますので、お見逃しなく!
コロナ対策のため、お家の扉は締まっており、ミッフィー(像)が家の中に置かれていました。ガラス越しに外を眺めるミッフィー、いわばロックダウン版ミッフィーですね。さみしそうな表情をしているように見えるのは、気のせいでしょうか……。
この小さなお家の周りには子ども向けのちょっとした遊具もあって、写真撮影にもぴったり。花壇もとりわけ可愛い、おすすめのスポットです。子ども連れやミッフィー好きの方はぜひ。
2. 公園中央のWillem-Alexander屋内展示場
風車の広場からすぐにアクセスできるパビリオンがWillem-Alexander展示場です。例年はチューリップに限らずさまざまな花をアレンジした展示がされていたように思いますが、今年は色々な種類のチューリップがずらりと並べられていました。圧巻です!
風が強くて寒い日には、屋内展示を積極的に活用したいところですね。強い雨の日にも屋内なら安心です!
3. 大きな水路と噴水のあるWilhelmina周辺エリア
上述のパビリオンを出て、Wilhelminaという別の建物に向かうと、水路沿いの散策コースが続いています。
水面に反射する太陽光がチューリップの花びらに透けて、光を放っているようすは神秘的なほどの美しさ。うっとりします……。
4. 癒し系の静かなJuliana/Tulpomania周辺
カラフルな花畑や人混みに疲れたら、メインエントランスから見て左手にある、落ち着いた雰囲気のエリアがおすすめです。変化のある森のルートを散策できます。
森林浴をしながら、ゆっくりと野鳥や草花を観察するのにぴったりです。キューケンホフ園内でも、このゾーンにはとりわけ渋い雰囲気が漂っています。
モザイク模様の個性的なお花「フリチラリア」(Fritillaria)が足元にひっそりと咲いていました。

職人技が光るチューリップの庭園
園内でチューリップなどの寄せ植えを眺めていると、まるで打ち上げ花火のように見えてきます。
高さのあるチューリップと背の低い花や葉っぱの形が面白いグリーンを合わせたり、寄せ植え全体が流線形だったりと、「色・高さ・形」、さらに花が開くタイミングまで、ガーデンデザイナーの方々が計算して作られているのだろうと想像すると、感激します……! れっきとした職人技ですね。
また、視覚だけではなく、嗅覚や聴覚に訴える体験ができるのも、キューケンホフ公園の魅力の一つです。
私が訪問したタイミングでは、ヒヤシンスの香りが園内に漂っていて、人々を魅了していました。
また、野鳥のさえずりが水路の水音と相まって、なんとも心安らぐ自然の音楽が奏でられていました。
キューケンホフ公園の緑深く水路の美しい、整った庭園の魅力に改めて気づかされた一日でした。
屋内展示場は一部のみ開放
今年は、屋内に色鮮やかな珍しいチューリップが所狭しと展示されていました。コロナ対策を考えると、屋内展示場は入場人数のコントロールは難しそうですが、幸いにもこの日はお天気に恵まれたためか、全体的に人が少なく、監視スタッフの姿も見かけませんでした。
しかし、展示場内では、マスクの着用は必須。出入口には手指の消毒液が用意されていました。
広場にはストリートフードの出店
今年は、園内のセルフサービスのレストランがある建物も閉鎖されていました。その代わり、園内の広場にはフライドポテトやアイスクリーム、ストロープワッフルなど、オランダおなじみのストリートフードの屋台が出店していました。
なお、公園のお土産が買えるショップはいくつか開いているお店があって、行列ができていました。
次回のオープンに期待
園内の花が開くタイミングは、花の種類によって異なります。そのため、4月半ばの段階でまだ蕾のままのチューリップもたくさん見かけられました。追加のオープンがあれば、4月下旬以降に開く花たちも来場者に楽しんでもらうことができるでしょう。
国内の感染状況を見ると今すぐには難しそうですが、5月までに開園の許可が下り、もっと多くの人が訪れられますようにと願うばかりです……!
text and photo / Mako Yasuda
お花大好き、チューリップ大好き人間です。
キューケンホフ公園の素晴らしさが伝わってきました。
コロナ疲れの心が癒されます。
風車広場の写真が一番のお気に入りです。
チューリップとヒヤシンスの写真も綺麗です。
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またしてもコメントをありがとうございます!公園の雰囲気が伝わっていれば、嬉しいです。
風車広場の光景は、オランダらしくて特色がありますよね。キューケンホフ公園ではないのですが、中に入れる風車小屋などもあるので、また別の機会にレポートできればと思っています。
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