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【Concert】イタリア随一のクレモナ弦楽四重奏団、雨のオランダに光をもたらす

(c) Nikolaj Lund

活躍めざましいイタリア随一のクァルテット

2月21日水曜、冷たい雨がぱらつく夜。オランダ・ライデン市立オーディトリウム(Stadsgehoorzaal)で、クレモナ弦楽四重奏団(Quartetto di Cremona)を聴く機会に恵まれました。

クレモナ弦楽四重奏団は、現代イタリアを代表するクァルテット。2000年結成から今までずっとオリジナルのメンバーで、演奏に指導にと活躍しています。私は2018年に初めて開催されたアムステルダム弦楽四重奏ビエンナーレで彼らと出会い、短いインタビューをさせてもらいました。

その当時、クレモナ弦楽四重奏団のメンバーたちが使用していたのは、日本音楽財団から貸与されたパガニーニ・クァルテットの4丁のストラディヴァリウス。かの東京クヮルテットが演奏していたセットです。

ジェノヴァ出身のヴァイオリンの魔人・パガニーニが所有していた楽器を、全員がジェノヴァ出身のこのイタリア人クァルテットが演奏していたのは不思議な巡り合わせでした。

さらに、財団の関係で2018年には初来日が実現。先立って私はジェノヴァまで出向き、独占インタビューを行いました。(当該記事はサラサーテ誌83号に掲載されています。)

クレモナ弦楽四重奏団の活躍はめざましく、すでにウィグモアホール・デビュー、さらにカーネギーホール・デビューなども果たしていますし、クレモナのスタウファー・アカデミーで後進の育成にも励んでいます。

名器が輝かせるハ長調

今回のプログラムはこちら。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番 (op.135)
<休憩>
シューベルト:弦楽五重奏曲 (D956)

1828年3月に初演されたベートーヴェンの第16番と、同じ年の11月に31歳の若さでこの世を去ったシューベルト。実はつながりのある2曲です。

クレモナ弦楽四重奏団は、音楽に対するイメージの豊かさと曲の変化をダイナミックに面白く聞かせる手腕、洒落っ気や愛らしさのある表現はピカイチ。どのようなレパートリーでも、生きた音楽の息遣いを感じさせてくれます。同時にくどくはならず、メリハリをうまく効かせて曲の魅力を引き出す加減が見事です。

ベートーヴェンが1826年に書いた作品である弦楽四重奏曲第16番は、亡くなる日のわずか6ヶ月前に完成した最後のクァルテット作品。ヴィオラの朗々とした歌い出しから魅力的な曲です。変化する曲調にはモーツァルトのような無垢な古典派らしい部分もあります。
意外なことにこちらの曲、同クァルテットは今まであまり本番で演奏していなかった模様で、「(あらゆる曲には)ステージに出て、初めてわかることがあるんですよねぇ・・・」とちらっとおっしゃっていました。だからこそ、ライブ感のある好演だったのかもしれません。


エルサレムQのチェリストが加勢

休憩後、シューベルトの弦楽五重奏曲に加わったチェリストは、キリル・ズロトニコフ(Kyril Zlotnikov)。エルサレム弦楽四重奏団(Jerusalem Quartet)のメンバーだけあって、アンサンブルの能力は抜群でした。ときどき微笑みながら、積極的にコミュニケーションやアイコンタクトをとって演奏しているのは、固定のクァルテット・プレイヤーならではでしょう。余裕さえ感じました。

ただ、クレモナ弦楽四重奏団の中に加わると、ズロトニコフの音がちょっと浮き上がって聞こえました。ややくすんだニュアンスの深い響きをしたズロトニコフと明るい輝きをした他のプレイヤーの違いがあったように思います。

ズロトニコフは、バレンボイムからデュ・プレ愛奏のものだというSergio Peressonのチェロを貸与されているほか、グァダニーニのチェロも使っているのだとか。(プロフィール)個人的には、今回はペレッソンを使用していたのではと推測しています。

たっぷりと歌いながらも、勢いよく切り込んでいくような鋭さと、重くならず、かつ優雅な疾走感のある素晴らしいシューベルトでした。
奇遇なことに、オランダでは数週間の間で、このシューベルトの弦楽五重奏を聴く機会が3回もありました。アムステルダム弦楽四重奏ビエンナーレ、アルマ・クァルテット(コンセルトヘボウ管のメンバーと指揮者のクラウス・マケラがチェロ(!))、そしてクレモナ弦楽四重奏団という順番で演奏がかかりました。私はアルマQとクレモナQを聞いただけですが、個人的には、一体感と歌心が随所で感じられるうえ、挑戦的でダイナミックな表現もあったクレモナQの演奏が好きです。


アンコールでは、ヴィオラのグラマッリャが「お天気は良くありませんが、ジェノヴァとイェルサレムというから来た私たちなので、ト長調の『光』で締めくくりたいと思います」と言って、五重奏曲の3楽章を繰り返しなしで演奏。ト長調の和音を響かせました。

シューベルトの弦楽五重奏第4楽章の最後の音であるドのユニゾンも実にかっこいいのですが、暗くて湿った寒い夜には、あたたかくて輝きのある弦の響きが沁みますね・・・!


最新の演奏動画はこちら。

Quartetto di Cremona : https://www.quartettodicremona.com

text: Mako Yasuda

カテゴリー:Uncategorized

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